【鏡面磨きは何の為?】本来の目的、上品と下品は紙一重

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本日は鏡面磨きについてです。

やり方の説明は文章では、なかなか難しい部分がありますので今回は鏡面磨きを何故するのか?を軸に書かせて頂きます。

SNSで様々な鏡面磨きの投稿を目にします。

いろんな磨きはあれど靴磨きの目的を、はき違えてる方も居ます。

「何故そのように思うのか?」と言うと。

主に人の靴を預かり磨かせて頂いている立場の僕はとても綺麗な鏡面磨きをしている靴を何度もお預かりした事があります。

その方は毎月1度ケアされる方ですが僕がケアをすると古いクリームや油分などが普通の靴に比べて多いのです。

鏡面磨きが今流行ってる反面「靴磨き=靴を光らせる」と思い込んでる方が多いです。

そのような人の靴に限ってクラックが多いと感じます。

鏡面磨きとは何か?

まず鏡面磨きというのは、缶に入った油性クリーム(*ポリッシュやワックス)を芯材が入った、つま先(トゥ)と踵をメインに塗り重ね少量の水とネル生地で磨く技法です。

「一般的にはハイシャインと呼びます」

今の靴磨きでは「鏡面」の文字通り、周りの景色がくっきり映るくらいにする為に研磨剤など使う人が多く居ます。

本人の靴なので好き勝手にすれば良いと思いますが人の靴を磨く場合は話が別になります。

当たり前ですが職人が行う鏡面仕上げによる美しさと、研磨剤で作られる美しさは雲泥の差です。

美しさをはき違えると「下品」になります。

もう一つ「基本鏡面磨きは自己満足」と思われてる方が多いですが、鏡面仕上げをするメリットがあるので行います。

輝かせる為だけに鏡面をやる職人は少ないと僕は思います。

ワックスを使う理由

 

元々ワックスは靴に薄く塗って磨いて艶を出す事を目的に作られています。

このワックスを薄く塗ることで撥水効果や埃や汚れも同時に防げ保護の役割が生まれます。

コードバンなどは水に弱いため必ずワックスを靴全体に伸ばして僕は磨きます。

鏡面仕上げにするにはワックスの層を作ると鏡面になってきます。

この様にする事でプロテクトの役割(衝撃による革の傷、めくれ防止)が生まれてきます。

これが第一の目的です。

この目的が分かってない人に限って透明度に拘ります。

トップで活動する職人の磨いた靴をみたら分かりますが、研磨剤なんて使用しなくても美しい鏡面になります。

プロテクトの役割も果たす鏡面の作り方ですが、これはいずれ動画に出します。

僕はただワックスを重ねたらプロテクトの役割になるとは思いません。

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鏡面磨きの美しさとは?

これは先に結論を述べますが「一体感」です。

前提として「美の価値観」は「人それぞれ異なります」。

鏡面磨きの難しさの一つで、「グラデーション」があります。

ワックスが塗ってある部分と塗ってない部分はメリハリが生まれ、境目がはっきりしてしまいます。

これを山羊毛で最終的にぼかしていくわけですが「グラデーションの技術」は磨きの段階で行います。

「ワックスを散らす」グラデーション「磨きの技術」グラデーション仕上がりが全然違います。

どちらも仕上がり次第ですが「一体感」で言えば後者が美しく仕上がります。

上品と下品は紙一重

「研磨剤を使うから下品」と言ってるわけではなく。

一体感が出来ず靴の本来の美しさを無くし安っぽく仕上がるため「下品」と僕は思ってます。

ただこの「上品、下品」というのは個人の価値観が大きく関係するので、「自分が出来ない物事」に対して「出来る人に凄いなぁ!」と思う事と同じです。

その根拠として「鏡面磨きが自分でやって全く出来ない人」は仕上がりの質は関係なく鏡面仕上げの靴をみて「凄い!」と思ってる人が多いと思いますね。

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靴磨きは輝かせる事ではない

冒頭で少し書きましたが「光らせる事が第一目的の人」靴の古いクリームや汚れが全く落ちてません。

他の職人さんも言わないだけで思った事がある人沢山いらっしゃると思います。

栄養を入れ替えるためには固形クリーナーや液体クリーナーを上手に使い分けて、靴の汚れをしっかり落とすべきです。

よくクリーナーは革に悪影響と思ってる方も居ますが、汚れはpHで動かす力や素材への負担が決まってます

また中性でも溶剤系のクリーナーだと含まれているベンジンが色を落としてしまいますので見た目では荒れたように見える事もあります。

力加減もクリーナーの量も人それぞれ異なります。

(例)この容器に少しだけ水を注いでください。

10人が同じ量を注ぐと思いますか?

答えはNoです。

(例)少し力を加えます

10人が同じ力を加えられると思いますか?

答えはNoです。

だから文字の世界で勝手に解釈するのではなく職人さんに磨いてもらいながら力加減を自分の手にかけてもらうとか「感覚」を養っていく必要があると思います。

靴磨きというのは汚れ落としから必ず始まります。

この汚れ落としがしっかり出来ていなければ、どんな栄養分の高いクリームなど入れても無駄です。

靴を綺麗に輝かせる為にクリーナーを上手く使い分け綺麗な状態でクリームなどを入れていきましょう!

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まとめ

鏡面磨きについて

 

  • 鏡面磨きは「ハイシャイン」と呼ばれる。
    鏡面磨きをミラーシャインと呼ぶ事もあります。
  • ワックスを靴に塗り少量の水とネル生地を使い磨いていく
    重ねる場合は塗ったワックスの上にネル生地にワックスを少し付着させて上から磨きます。
    滑りをよくするために穴飾りなどがあれば避けて2滴ほど水をのせて磨きます。
    これを繰り返すだけです。
  • ワックスを塗る・鏡面磨きの目的
    傷を埋め目立たなくする・撥水・革に埃の付着を防ぐ・プロテクト
    それに伴う見た目は二の次です。

 

靴磨きについて

 

  • 靴磨きの本来の目的
    靴を履くと汗が染みこみ、埃が付着し、場合によっては泥や砂、雨
    これらが革を乾燥させていき油分が抜けたり、水分が抜けていきます。
    これらを落としてリセットして栄養補給するのが本来の目的です。
  • クリーナーを使い分けて理解する
    汚れにも水性、油性とあります。
    販売しているクリーナーでも水性には強いが油性には弱いなどがあり。
    その弱さにも違いがあります。
    なのでクリーナーを複数持つ事(強弱)はとても正しいと言えます。
  • クリーナの量や力加減は大事
    いくら中性で素材の負担が軽くても、雑巾がけのようにゴッシゴシやったり、革に染みが出来るほど使えば「やりすぎ」になり革に負担が掛かります。
    クリーナーの量は10円玉程度、力加減は優しく拭き取るを参考にしてください。
    落ちない場合は量を守り数回に分けて使用してください。

 

では、良い靴磨きを楽しんでください!

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